大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)43号 判決

事実及び理由

(争いのない事実)

一  本件に関する特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨および本件審決理由の要点がいずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いがないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 前示本願考案の要旨に成立に争いのない甲第一、第二号証、第六号証および第一〇号証(本願実用新案登録出願願書および明細書ならびに手続補正書)ならびに原告自認にかかる各事実、すなわち、引用例の記載内容ならびに本願考案と引用例との一致点および相違点がいずれも本件審決の認定するとおりであること、右相違点のうち、スキー本体の滑走面材の上側の層にスチールエツジを挿入固着することが参照例に記載され、本願出願前において公知であること、および木材よりなるスキー本体の上下に強化プラスチツク層および滑走面材を設けることが本願出願前周知の事項に属することを総合すると、本願考案は、本件審決の認定するとおり、引用例、参照例および上記周知事項に基づききわめて容易に考案することができるものとするを相当とし、原告の主張は、以下に説示するとおり、いずれも理由がないものといわざるをえない。

1  原告は、引用例は積層スキーではなく、特定の積層部分にスチールエツジを挿入固着した点が開示されていない旨主張するが、本件審決は、木材よりなるスキー本体の上下に強化プラスチツク層および滑走面材を設ける構成(積層スキーの構成)については、本願出願前周知であり、また、本願考案と同様に、スキー本体の滑走面材の上側の層にスチールエツジを挿入固着する点は、参照例に開示され、本願出願前公知であると認定したものであり(このことは、前記本件審決理由の要点に照らし明白であり、しかも、上記の各事実が本願出願前公知ないし周知であることは、原告の自認するところでもある。)、これらの点が、もともと、引用例に示されていると認定したものではないから、引用例に原告主張の点が開示されていないからといつて、引用例の認定に誤りがあるとして、本件審決を論難することは当を得ないものというべきである。また、原告が、参照例はメタルスキーであり、ボトムプレート11にL型スチールエツジを取り付ける点が開示されているだけで、本体と滑走面材との間のプラスチツク層について何ら説明がないと主張する点も、本件審決は、右原告指摘の「本体の上下に強化プラスチツク層および滑走面材を設ける」点については、このような構成のスキーは本願出願前周知である(このことは、前示のとおり原告の自認するところである。)としたものであり、参照例は、単に、スキー本体の滑走面材の上側の層にスチールエツジを挿入固着する点が本願出願前公知であることの一例として挙示したものであること前示本件審決理由の要点に徴し明らかであるから、原告の右主張も本件審決の認定と齟齬した適確性を欠く主張というべきである。

2  原告は、本願考案は引用例および参照例から期待しえないすぐれた効果を奏するものであり、したがつて、引用例および参照例からきわめて容易に考案できるものではない旨主張するけれども、本願考案の原告主張の効果は、いずれも引用例、参照例および上記周知事項の構成自体に徴し、これらのものより当然に生ずる予測しうべき程度の効果にすぎないものとみるを相当とし、これを左右するに足る証拠はないから、原告の上記主張もとうてい採用しうべき限りではない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却する。

〔編註〕本願考案の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。

本願考案の要旨

木材よりなる本体、本体の上側および下側の強化プラスチツク層、本体両側の合成樹脂板、下側の強化プラスチツク層下面の滑走面材および下側の強化プラスチツク層に一体に挿入固着したL型断面のスチールエツジよりなるスキー。

本件審決理由の要点

本願考案の要旨は、前項掲記のとおりと認められるところ、原査定の拒絶理由に引用された本願出願前公知の米国特許第三、一三二、八七四号明細書(以下「引用例」という。)には、スキー本体が強化プラスチツクで一体に成形され、この本体の滑走面左右両端部にスキーの長さ方向に延びる断面L字形の滑走エツジを挿入設置したスキーが記載され、本願考案と引用例のものを比較すると、両者は、スキーの強化プラスチツク層にL型断面のスチールエツジを一体に挿入固着した点で一致し、本願考案が、木材よりなる本体、本体の上側および下側の強化プラスチツク層、本体両側の合成樹脂板、下側の強化プラスチツク層下面の滑走面材および下側の強化プラスチツク層にスチールエツジを挿入固着したスキーであるに対し、引用例のものは、スキー本体の上側、下側および両側が強化プラスチツクで一体に成形され、その中に芯材として波形の強度部材を埋設したものである点で一応相違するが、スキー本体の滑走面材の上側の層にスチールエツジを挿入固着した点は本願出願前公知(一例を挙げれば、米国特許第三、〇九五、二〇七号明細書(以下「参照例」という。)参照)であり、また、木材よりなるスキー本体の上下に強化プラスチツク層を積層した点は引用例に示されていないが、この種スキーにおいて、木材よりなるスキー本体の上下に強化プラスチツク層および滑走面材を設けるようなことは、請求人(原告)が明細書に従来例として示しているように例を挙げるまでもなく周知であるから、これらの相違点に考案を認めることができない。したがつて、本願考案は、全体として、引用例に記載された考案ならびに公知事実に基づききわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第三条第二項の規定により実用新案登録を受けることができない。

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